Nスぺ「妻が夫にキレる本当ワケ」
NHKスペシャル「ニッポンの家族が非常事態!? 第2集 妻が夫にキレる本当のワケ」(2017年6月11日午後9時放送)、放送終わりましたね。
色々とネット上でもリアルでも、たくさんの「妻」たちからお話を伺うことができました。
みなさんに共通しているのが
「『ありがとう』とか、ひとことでも、夫が何か言ってくれたらいいのに…」でした。
「それだけで、全然違うのに…」。ほとんど全員が同じ意見。
わかるーーーーーーーーーーーーー!!
わかるーーーーーーーーーーーーー!!
やはり、多くの女性が求めているのは、「夫からの共感」であり、
それを、多くの夫たちは提供できていないんでしょうね。
だから、離婚申し立ての最大の理由が「夫が自分の気持ちを理解しないこと」=夫からの共感を得られないことだというのもリアルで実感できました。
ニッポンの家族の危機の原因は、女性だけにあるの??
ただ、違和感もたくさんある番組でした。
通常は、意欲や征服欲・攻撃性・性欲などを司る「テストステロン」は男性の方が多く分泌されていると言われています。いっぽうで、愛情や安らぎ、母子の絆などを司る「オキシトシン」は女性の方が多いとされています。
番組には、仕事熱心な妻と、家事を熱心にする夫が登場。
2人の「テストステロン」血中濃度を測定すると、男女で逆転現象が起きていることが判明します。
夫婦ともに驚いています。
ナレーションは「女性のオキシトシンの値が低いと、夫婦仲に問題が起きると言われています」。
このナレーション、かなり違和感を感じました。
女性だけが問題なのでしょうか????
男性だってテストステロン値が高すぎると、浮気に走ったりしますよ。
オキシトシン値が低い男性は、家庭をあまり顧みませんよ。
「イクメン」という言葉が定着しましたが、育児に日常的に深く関わっている男性の数はまだまだ少数です。
「男女とも(そして子どもも)オキシトシン値が低い」…これは現代社会の問題です。
片方の性の変化をことさらに取り上げて「危機の原因…」とするのは、
「女性の社会進出が、家族危機を生んでいる。女性の社会進出による家庭不和は女性の責任だ」ととられかねない内容です。
進化の過程…も
進化の過程にさかのぼるために、毎回毎回、アフリカの部族を取り上げることにも違和感を感じます。
番組は、ホモサピエンスは、数千年前まで、一夫多妻制が主流であったといいます。
そしてトーゴの一夫多妻の部族から、ミシェルさんという男性の大家族を紹介します。
ミシェルさんの両脇には、女性と子どもがずらり。
ミシェルさんは「愛があるからこそ彼女たちを次々と妻にしたんだ」と言います。
確かに、優れた男性がたくさんの女性を養うことで種を繁栄させる…のは、確かにそうだったかもしれません。
が。
が。
なぜ、ミシェルさんの両隣に並んでいる、「妻」たちのコメントがそれぞれないのでしょうか???
トーゴまで行ったのに、なぜ一夫多妻の夫側の意見だけしか紹介しないのでしょうか?
一夫多妻から一夫一婦になったのは、性感染症だけが理由なのでしょうか?
そこの「源流」にある女性の声も聴きたかったところです。
短絡的な論理展開
「夫が妻に共感していない。だから妻はキレる」というのであれば、「夫側も共感を司るオキシトシン値が低い」ということを意味している可能性がなぜ模索されないのでしょうか?
仕事をしている妻のテストステロン値が高いのが「妻がキレる」原因のひとつとして大きく取り上げられていますが、申し訳ないけど「専業主婦」だってキレますよ。
一見、女性に寄り添う…というテーマにも思えるのですが、不思議と「妻は家庭」「夫は仕事」が本来の姿で…云々という空気感をジンジンと感じます。
Nスぺ、性的役割分担への意識が濃厚すぎ
番組全体が「男女共同参画社会が進んで、仕事を持つ女性が増えた結果、女性が男性化して、離婚が増えた」という、すべての原因が「女性」にあるという、言外のメッセージがあるように感じてしまいます。
これを感じたのは私だけではないようで、SNS上でも同様のご意見を下さった方がいました。
実は、私なかむら自身も、最新科学の研究を受けて、オキシトシンの分泌を増やすことによって母の「母性」、母子の絆を育てて育児をラクにしようというテーマでお話しています。乱暴な伝え方をすると、「性的役割分担」を助長しかねないという点で非常に扱いが難しい話です。(オキシトシンは父子の絆も深めます。父親対象講座も開きたいと思っています)
そして「産んですぐに、母たちは、当たり前に母性を持つわけではない」という出発点から話を進めています。
「最新科学で家族の絆について考える」。
NHKスペシャル「ニッポンの~非常事態?」シリーズは、家庭の課題を科学で説明するといった新しい手法を評価したいと思っています(し、わたしがやっていることも、実際に非常に似ている)。
けれど、こうした乱暴な単純化・性的役割分担への古い認識などを、じわじわと感じさせる点が非常に残念なのです。
昭和ならともかく、2010年代も後半になっている今、NHKが全国放送でやるには、ナレーションの言葉の使い方があまりに単純・乱暴ではないか…というのが正直な感想です。
科学的に、家族の課題を考え、解決策をさぐる。
これは、わたしも講座をしていて、こうした視点がたくさんの人をラクにすることを実感しています。
だからこそ、NHKのこのシリーズ、さらにグレードアップして続編を期待しています!
そしてオキシトシンについてもものすごく違和感を感じたので、それは、次回へ続く!
番組の内容概要はこちらで細かくまとめています↓
◆「最新科学であなたの育児がラクになる!」ご予約可能なワークショップはこちら(6月17日現在)
◆シンプル育児研究所の産後クライシスの記事についてはこちら
◆NHKスペシャル「ニッポンの家族が非常事態!? 第1集 わが子がキレる本当のワケ」
(2017年6月10日21時~)のまとめについてはこちら↓
◆子どもとあなたが劇的に変わる愛情ホルモン「オキシトシン」の話はこちら
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