【論文から検証】新型コロナ 妊娠・出産 赤ちゃんへの影響は

分娩台で誕生した赤ちゃんと母親

新型コロナの感染が拡大している今(2020年夏)、
現在、妊娠中の方は特に不安が大きくなっていることとお察しします。

新しい命をお腹に抱えてのこの事態をどう乗り切るか?
今、一生懸命、不安とたたかっておられるのではないでしょうか。
見えない不安とたたかうよりも、
コロナによる影響を「見える化」することで、現在、できる対策が見えてくるはずです。

現在の世界からの知見などを元に、総合的に情報をまとめました。
どうか、不安にかられて何らかの決定をする前に、しっかりと現状を把握してくださいね。

執筆者:なかむらあけみ(科学ジャーナリスト 4児の母)
1人目出産の際、科学情報のプロでも正しい育児情報が判別できず、混乱した経験から、科学的で「育児の土台」となるシンプルな育児情報を広める活動を行う。各国の科学論文等から”幸せな育児にとって欠かすことのできない3要素”をまとめる。医療関係者等も聴講する講演の参加満足度は過去4年間、98%。

■この記事で分かること■
世界の信頼できるデータを検証した複数の研究は
「母体がたとえ感染していても新生児の感染可能性は1~5%」
「新生児は軽症のみ。重症化例はない」と結論付けている

【論文から検証】新型コロナ 妊娠・出産 赤ちゃんへの影響

1 妊婦がコロナに感染した場合の赤ちゃんへの感染可能性
  ・中国が半数を占める各国データは1.3%
    ・イギリス国内のみの研究では5%

2 新型コロナ検査で
性となった新生児の症状
      ・陽性だった新生児、重い症状の確認はない
      ・ルーマニア病院内で感染した新生児10人全員が無症状

3    赤ちゃんはどこから感染する?胎内?胎外?
      ・胎盤から感染するケースも
  ・多くは出産後の感染とみられている

4 withコロナ時代の出産 不安になりすぎず

妊婦が新型コロナウイルスに感染した場合、赤ちゃん感染可能性は

pregnant woman

新生児が感染していることはごくまれです


元となるデータがないので何とも言えませんが、
AFPの記事内で、オックスフォード大の教授(母子公衆衛生学)は「陽性の母から産まれた赤ちゃんが陽性になっている可能性は、出産全体の1~2%」と答えています。

なるほど、いくつかの論文を読むうちに、その「1~2%」がなんとなく見えてきます。

中国が半数を占める各国データは1.3%

  中国や米国、スウェーデン、韓国など2020年3月上旬から4月1日までの時点で発表されていた
産婦関連の論文を総括した分析
によると、
陽性の母体から誕生し、検査を受けた新生児75人のうち、1人が陽性でした(1.3%)。

(なお、この赤ちゃんは、リンパ球が軽度の減少を見るなどの乱れが一次的にあったそうですが、予後は良好だったそうです。陰性だった赤ちゃんのうち、1人は多臓器不全で亡くなっていますが、ウイルスとの関係は確認されていません。また2人が、軽度のリンパ球減少症が認められていたそうですが、回復したとのことです)

イギリス国内のみの研究では5%

 オックスフォード大学が英国の産科データをまとめた研究では、
1000人あたり4.9人の妊婦がCOVID-19に感染して入院したと考えられ、
調査の対象となった新生児265人中、5%に当たる12例が陽性だったそう。

「1~2%」ではなく、5%となっている例もありますが、
複数の研究を見ていくと、
おおむね1~5パーセントとの認識で研究者は考えているのだろうなと推測できます。

では、このうち、陽性となった赤ちゃんたちの症状はどうなのでしょうか??

新型コロナ検査で陽性となった新生児の症状

分娩台で誕生した赤ちゃんと母親

新生児が感染したとしても、ほとんど無症状だそう

陽性だった新生児、重い症状の確認はない

米保健省のデータベース上に2019年末~2020年4月末までにアップされた
covid-19陽性となった新生児関連論文を分析した結果がNature comminication
に掲載されています。

信頼できるデータがあった新生児25人の症例は、すべてが予後が良好だったとのこと。
発熱が3割と多く、ついで、嘔吐16%や咳12%。
ただし、無症状の赤ちゃんもこのうち4人だけいました。

入院していた赤ちゃんは最長で40日ですが、全員が元気に退院したとのことです。
この研究は「covid-19陽性の新生児の予後は良好で、重症化例はまれ」と結論付けています。

あれだけの感染者数を出したイタリア。
ですが、イタリア
保健省が4月末時点までに、
”これまで陽性反応のあった新生児20~25人は「全員が重い症状はない」”と公表しています。

ルーマニア病院内で感染した新生児10人、全員が無症状

なお、あってはならないことですが、
ルーマニアの病院で医療スタッフから新生児10人が感染した際には、
10人とも無症状だったそうです(
daily Sabah)。

マスクなしで医療スタッフがお世話していたというのですから、絶句です。
しかし、それでも赤ちゃんたちが無症状だったというのは、なかなか興味深い記事です。

新型コロナ 赤ちゃんはどこから感染する?

コロナウイルスは野イチゴのように表面に突起があります。

コロナウイルスはある意味、野イチゴのように表面に突起がありますね。

中国の研究でも他国の研究でも、
陽性になった赤ちゃんが接触していた母体や羊水からは
ウイルスは検出されていないとの見立てが多数派でした。

胎盤から感染するケースも

しかし、2020年7月には、フランスでのケースで世界で初めて、
母胎内での感染が確認され、論文がnature communicationsに掲載されました。
胎盤に最も多くウイルス感染を認めたとのこと。
Transplacental transmission of SARS-CoV-2 infection Daniele De Luca

多くは出産後の感染とみられている

 とはいえ、母胎内での感染は、これまでご紹介した研究からも、きわめてまれと考えられるでしょう。
新生児期に感染した赤ちゃんは、多くが誕生後に母体などとの接触から感染したものと見られています。
先ほど紹介した米保健省のデータベース上から論文分析の研究では、
感染経路は、出産後の母の授乳等、父のスキンシップや、祖父母とのやりとりで感染した模様です。

産後の感染をやはり警戒する必要があるようですね。

産後の感染でも、無症状や軽症ですので、闇雲に赤ちゃんとの接触を恐れる必要はないかと思います。
研究によって、出てくるデータや推論は様々ですが、
「ごくごく、ごくごく、まれに垂直感染もある」といったレベルで認識しておくのが良いかもしれません。

withコロナ時代の出産 不安になりすぎず

ユリを持つ天使

新型コロナへの不安、適度に恐れ、適度に安心しながら妊娠期間を楽しめますように。


赤ちゃんをお腹に迎え、そして産み、育てる。一連の長い歳月は人生にとって一大プロジェクト。
この間、不安や心配が先行しがちです。
特にwithコロナの時代には先が見えない不安も例年よりも大きいかとお察しします。


それでも、目の前の、赤ちゃん自身、子ども自身を見ることで、前に進むことができるかと思います。
(というか、前に進まざるを得ないですね)
あなたの赤ちゃんはお腹の中ですくすく育っている。

「親として、現状を受け入れ、腹を据えざるを得ない事態」という試される事態が、
今後、山のように降ってきます。

どうか感染への防護対策をしながらも、
それでも、赤ちゃんのを見つめ、大事なこの時を、できるだけ安心して過ごせますよう、お祈りしています。

繰り返しますが、ほとんどの赤ちゃんは母子感染しない模様。
感染したとしても100人の陽性の妊婦さんからわずか1~2人の赤ちゃん。
そして、そのうち、ほとんどが無症状や軽症。

もちろん感染対策は必須ですが、
どうか、どうか、心安らかに、大事な時期を過ごしてくださいね。
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