37週0日以降・正産期を迎えると、いつ陣痛が来るのかドキドキしながら待つ毎日ですね。
予定日が待ち切れない方、早く赤ちゃんをこの手に抱きたいと言う方は、できるだけ早く陣痛が来るようにと思うかもしれません。
「オロナミンCを毎日飲んだ」「焼き肉を食べた」などネットにあふれる不思議なジンクスを信じている方もいるかもしれません。
でも、ジンクスはただのジンクス。
本気で陣痛を早めたいなら、科学的に根拠のある方法を試した方が確実ですね。
どのようなことをすれば陣痛が早く来るのでしょうか?
執筆者:なかむらあけみ(科学ジャーナリスト 4児の母)
1人目出産の際、科学情報のプロでも正しい育児情報が判別できず、混乱した経験から、科学的で「育児の土台」となるシンプルな育児情報を広める活動を行う。各国の科学論文等から”幸せな育児にとって欠かすことのできない3要素”をまとめる。医療関係者等も聴講する講演の参加満足度は過去4年間、98%。
陣痛を早める根拠ある方法2選
研究論文と実体験から、確実に、そしてすぐにでも実行可能な2つの方法をお伝えしますね。
<目次>
1 自然な陣痛発来、基本的生活習慣を整えることは大前提
2 最も効果的だった行動は「ウォーキング」
3 本気でお産を早めたい人向け「本当に正しい乳頭刺激の方法」
4 効果が高い方法は、出産時期を考えて実行しよう
5 まとめ
1 自然な陣痛発来は、基本的生活習慣を整えることが大前提
自然な陣痛は、母体のホルモンのバランスが大切
陣痛発来は、オキシトシンを含めた様々なホルモンの見事なハーモニーの結果です。
胎児の肺の中から出てくる化学物質が、子宮を刺激し、陣痛のトリガーになるといったことも研究されています。
つまり正しく健康的な陣痛が発来するためには、母体のホルモンのバランスが良い状態でいる必要があります。
ただし。
現代の妊婦は、そのホルモンバランスが崩れがち。その結果、自然な陣痛発来が難しい状態にあるようです。
現代の妊婦の4分の1が人工オキシトシンなど陣痛促進剤を使って出産
現在の妊婦さんの4分の1が人工オキシトシンなどの陣痛促進剤を使っての出産になっているようです。
妊婦の体が、自然な陣痛を育めなくなっているためだと考えられています。
人間の体は自然の一部です。
わたしたちの脳内は、スマホやパソコンなどバーチャルの世界に親しんでいたとしても、人間の体のメカニズム自体は、1万年前と大した変化はありません。
ですが、深夜・夜更かし生活、ストレス、運動不足など、自然の中で過ごしていた時代とは全く違う生活習慣の中でわたしたちは暮らしています。
ホルモンバランスも安定しない人が増えているのは間違いありません。
結果として、医療に頼らざるを得ないお産が増えています。
心の安定と、ホルモンバランスを整えるのが安産の土台
もし、あなたが自然な分娩を希望する場合は、ホルモンバランスをしっかり整えることが近道になります。
特に、陣痛を進め、親子の愛着を育てる「オキシトシン」を体内で自ら分泌しやすい状況を維持することが大切です。
オキシトシンは、安心している、生活習慣が自然のリズムにそっている時などに十分に分泌されます。
ですからできるだけストレスのないような状態にご自身をおいてくださいね。
出産直前はもちろんですが妊娠中期後期からは特に規則正しい生活を心がけるようにしてくださいね。
自然のリズムを意識して生活していると、1日の何時ごろに陣痛がきそうか、ある程度の予測がつくようになります☟
では、あなたの体のオキシトシンのシステムを整えるためには、そして自然な陣痛を導くためには、どのようなことができるのでしょうか?
無事に出産した先輩ママたちは、どのようなことをしてきたのでしょうか?
2 陣痛を進めた行動は、「1日60分以上のウォーキング」
健康な妊婦さんにとって、ウォーキングは最も効果の高い陣痛を自然に進める方法のようです。
出産日から7日を逆算し、その間に陣痛を早めるために行った妊婦500人超の行動を調べた研究があります。
このうち最も結果が良かったのがウォーキングだったそうです。
スクワットやお灸などよりもしっかりした効果があったとのこと。
ただし、10分20分といった短時間ののんびりの散歩程度ではありません。
「中等度の運動強度」で1日最低50分以上歩く。
この程度ではじめて、自然な陣痛で分娩できた方が有意に多かった様子です。
少し汗をかく程度で、1日1時間程度のウォーキング、やってみてくださいね。
過度の運動は赤ちゃんにとっても負担が大きいようです。
ですから、日頃のご自身の運動量を考え、体調にくれぐれも留意するのをお忘れなく。
運動不足がずっと続いている方は、少しずつ体力をつけることから考えてくださいね。
3 本気でお産を早めたい人向け「本当に正しい乳頭刺激の方法」
正しい乳頭刺激は、わずか2%しかやっていない
血中のオキシトシン濃度を十二分に上げる方法があります。ただしこれは正期産のリスクの低い方だけができる方法です。
それは「乳頭刺激」です。
乳頭刺激といっても、ただ少し乳首を刺激するだけではありません。
先の研究でも、乳頭刺激を行った妊婦さんは55%にも上ったようです。
しかし、正しい乳頭刺激の方法を実行できていた人は、わずか2%でした。
本当に正しい乳頭刺激は、陣痛を本気で早める
乳頭刺激とは、乳首をつまんで、上下、左右にひねる作業を通じて、陣痛を進めるオキシトシンを分泌させる行動。
ここまでは多くの人が知っているでしょう。
でも、実際に継続する時間は5分や10分ではないでしょうか?
本当に正しい乳頭刺激は、3日間で合計3時間以上が必要です。つまり「1日合計1時間以上」が有効な方法です。
臨月に乳首を触るのは、感覚が敏感になっていて、居心地がよくないと感じる人も少なくないでしょう。
乳首を刺激するのは妊娠後期の女性にとってはかなり精神力が要る作業だと思います。
筆者は苦手だったので5分くらいで諦めました。
実際に1日合計1時間もできる方は、そうとう精神力が強いのではないかと予想します。
ただ実際に乳頭刺激を長時間行った方は、体内のオキシトシン濃度が十分に高まっていることが分かっています。
また、「乳頭刺激で陣痛が来た」という研究論文もいくつか出ています。
もし本気で日を早く迎えたい方は、1日1時間の乳頭刺激をやってみる価値はあるのではないでしょうか。
4 効果のある陣痛を早める方法は、37週0日からの開始は避けたい
37週0日になると、いよいよ「いつお産が来てもいい時期」と言われますね。
早く赤ちゃんの顔を見たいから、陣痛を早める行動をとりたい。
そんな風に考える方もいらっしゃるでしょう。
体力をつけたり、基本的な生活習慣を整えることは、妊娠中いつ初めてもよいことですね。
ただ、ここは私見ですが、乳頭刺激は特に、効果が高いので、時期をしっかり考えてやった方がいいと、経験上思います。
赤ちゃんが大きく育ちすぎているといった問題がないのであれば、37週0日からいきなり乳頭刺激をしてお産を早めるといったことはお勧めしません。
筆者は4人の子どもを37周2日、38週、39週、40週0日で出産しました。
筆者は、お腹があまりに重くて、早く自由になりたい気持ちも強く、1人目も2人目も37週が来たらすぐに陣痛を進めるための行動をとりました。
そして、やはり正産期の中でも、早めのお産となりました。
今考えると、自分本位だったなぁと思います。
3人目を39週で出産してみると、1週間、おなかの中にながくいるだけでも全然、肉付きが違ったんですね。
この時、上の子2人も、お腹の中でもう少しゆっくりいさせてあげればよかったなと少々後悔しました。
4人目は、生活を整え、しっかり待って、予定日に生まれてくれました。やはりしっかり肉がついているので、抱き心地も楽でした。
1日でも長くお腹の中にいるほうが、生まれた後の赤ちゃんがより肉付きがよくて親の方も安心して抱っこできました。
初産の方は特に「早く生んで身軽になりたい」と考えるかもしれませんが、安定して抱っこできることは、親の安心や、赤ちゃんの育てやすさにもつながります。
もし、筆者のような理由で早く生みたいと思っているなら、ちょっとだけ待ってあげて見てくださいね。
当たり前ですが、生まれてしまったら、もう絶対にお腹には戻ってくれないんです(笑)
子どもとはこの先、何十年ものつきあいになるんです。お腹の中にいる「一体」である時間はわずか。どうか、どうか、ゆっくり味わってくださいね。
もちろん、自然なままで37週に出産した場合は、それが親子のタイミングだったのだと思います。ありのままで自然のままで、ご自身を認めてあげてくださいね。
5 まとめ
正産期を迎えた妊婦さんにとって、オキシトシンの安定的な分泌と
そのための土台としての基本的な生活習慣は、陣痛発来に大変、重要だということがご理解いただけたでしょうか。
効果的に陣痛を進めるトリガーとして、1日1時間の適度なウォーキング、そして1日1時間の乳頭刺激が、十分な結果をもたらします。
単なるジンクスではなく、実際に陣痛をもたらす行動です。
ですから、行う時期を考えて、実行してみてくださいね。
あなたのご安産をお祈りしています。
<参考論文>
自然分娩を希望する妊婦のオキシトシン・システム活性化の効果
分娩前7日間に妊婦が行った陣痛発来への取り組み
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